KONYのオーストラリアワイン見聞記その3「香港VINEXPOの巻」 |
5月29日 第2日目 「VINEXPO香港の巻」
爽快な目覚めの僕らは、香港・九龍からビクトリア湾をスターフェリーに乗ってセントラルへ向かう。そこには、現地(香港)に溶け込んだ表情のワインオーストラリア手島代表が待っていた。
今回の香港に寄った最大のミッションは、VINEXPO研修である。
このVINEXPOアジア・パシフィックは、30か国から1,000を超えるワイン&スピリッツの生産者やインポーターが出展する世界最大規模の見本市。フランス・ボルドーを中心に、世界中の著名なワイナリーが、伸びゆく中国マーケットの拠点香港で業界関係者を対象に、最新情報を入手するためのトレードショーだ。会場面積は、なんと10,500㎡と超広いスペース。今年は、29日から31日までの期間中過去最高の15,000人を超えたそうだ。
ビジネスマインドで、世界市場を見るなら、やはりアジアの新興国エリアが伸長著しいし、そこを狙うのが、マーケターだろう。日本は、成熟市場と考えられ、優先順位はまだ高いものの、後回しでも大丈夫といった「安牌な市場」と見られている。緊急性は、中国、香港、シンガポールなのだ。
僕らは、この一日だけが香港での活動日であり、時間も限られており、オファーのあったオーストラリアワイン10社のブース訪問し、レクチャー&テイスティングとなる。一社当たり30分。いずれも、着席なしでスタンディングで、レクチャーを受ける。
このVINEXPO会場だけで、10社48種類のテイスティングだった。印象に残ったワイナリーやワインをピックアップし、素敵なコメントや感想を書き残す。
①CAPE BARREN (マクラーレン・ヴェイル)
・Old Vine Shiraz 2010
樹齢80年以上120年までのシラーズをブレンドしたワインで、とても口当たりもよく飲みやすいエレガント感があった。「重い」=マクラーレン・ヴェイルのイメージは、そこにはない。
醸造長のROB DUNDONの言葉は印象的だった。「アート・音楽と同じようにバランスがワイン造りで最も大切なこと。フードとフレンドリーなワインを目指していきたい」と。
②Balthazar (バロッサ)
「バルタザール」の名前の由来は、「バビロニアの愛と戦いの神」から採用。
③SHINGLE BACK
いずれも、アルコール度数が14度以上と高い。オールドスタイルの作り手で、ある意味では、「芯の通った頑固な作り手」だろう。昨今の作り手が簡単にスタイル変更をする中においては、気骨を感じた。その証左にジミー・ワトソン賞をゲットした最後の6本目の「D-BLOCK RESERVE」は、ものすごいタンニンと強烈な樽香。「お、お、おおっ、オールド!」と訳の分からないコメントをメモっていた。それほど強烈だったということか。アルコール度も15度と高いが、価格も60ドルと高い。
④BROWN BROTHERS
マーケティング・マネージャーいわく「地球温暖化で、今後はさらに2度上がる。確実にタスマニアを押さえておくことが、急務だ」と。ピノ・グリジョとピノ・ノワールの冷涼的な白・赤品種のクリスピーなエレガント感に、「いまどきOZ」とチェック!
⑤MOUNT BARLEN(グレート・サザン)
牡蠣とリースリングのポスター最高!西海岸最大の牡蠣の産地グレート・サザンならではのアプローチ。ミネラリティーがあり、爽やかなテイスト。また、シャルドネも、オールドスタイルの面影はなく、生き生きとした酸のきれいなワインに変わっていった。「樽の香りを抑えた造り」が最大の変化ポイント!
⑥FERN GROVE
ここは、力の関係で現在中国の会社に買収された。中国人の敏腕マネージャーがピタリとサポート。全般的に「力強いワイン」を志向する。「樽香」「バニラ」そして「無骨」なイメージ。ミディアム・トーストの強いアメリカン・オークを使用したパワータイプを推進か?時代と真逆のアプローチ。
⑦MITOLO
イタリア系ならではの素敵なアプローチ。ヴェルメンティーノ、サンジョベーゼを巧みに華麗に扱う。なかでも、珠玉は「SERPICO」だ。これは、カベルネ・ソーヴィニヨンを完熟したまま木に残し、干し葡萄状にしたものをイタリア的チャレンジでアマローネ・スタイルにした洒落た逸品。
⑧De Bortori Wine’s(ヤラヴァレー)
デ・ボルトリは、最終日に訪問するが、このブースも訪問。デ・ボルトリでは「フィジオロジカル・サイエンス」という言葉を発していて、生理学的な香りや味わいによって「熟度に達することができるよう」栽培に力を注ぐという。そのいい例が、シャルドネであり、東斜面に植えている。だから、絶対に西日は当たらないという。また収穫のタイミングも重要で、糖度と酸のバランスをチェックして収穫するという。つまり「完熟」である必要は、まったくないのだと断言。
⑨KATNOOK ESTATE (クナワラ)
クナワラのテラロッサと冷涼気候が織りなすエレガンスさ。夏の平均気温19.5度の海洋性気候がもたらす冷涼タイプの赤。茎っぽさや青みがクナワラらしい。
⑩THE DIVA NETWORK
ここで、カーリーヘアの新進気鋭のワイン作家WHILLIAM DOWME氏と遭遇。「Thousand Candles」のデザイン性の高い自然派ワインは衝撃的に目を引いた。ハード瓶を使用。キャップシルにも蝋で溶かした凝り方。しかもラベルは、人の集まるフィールドを点状(モールス信号的)に描き、オレンジ色で熱を表現したワイン。SO2を極力抑え、還元香スタイル、クリスピーな感覚なのだが、余韻が長く、飲み明ける推進力を持つ感覚が伝わってくる。不思議なワインかもしれぬ。ヤラヴァレーでも新進気鋭な作家だという。ツアー中に、彼ともヤラで、停電の夜に再会するが、この時の強力なイメージやインパクトは抜群だった。日本に於いては、ダイヤモンド酒販のカール氏が取り扱う.
ワインオーストラリアの手島代表のあの言葉が、心を離れなかった。「北京ダックの前にここと決めていた」と。手島代表の魂胆はすぐに理解できた。「そのワインが、バルサミコを髣髴させる酸化臭すら感じさせるお酢的ノーツ。そして、彼の哲学的・芸術的アプローチ」とメモらせる謎めいた考え方をする長身の青年は、気になる存在となった。この出会いが、今回の旅のひとつのKEY WORDとなったことを後で実感することになる。
彼から、サイン入りポスターを頂戴し、VINEXPO会場を後にした。
香港で僕は、昼休み(1時間)と中休憩の30分を有効利用させていただき、ジェトロ香港の彦坂氏とマリーゴールド社(現地商社)とお会いした。これは、秋田ジェトロに「弊社のさくらワインに興味がある。せっかく香港にくるならお会いしたい」とアポをいただいていたからだ。そのわずか1時間30分のために、資料を整えてきてよかった。お気に入りいただき、今後の直接取引がほぼ決定した。離れ業ではあったが、貴重な時間を融通していただき、ワインオーストラリアには、感謝したい。香港では、少しの商売もできた有意義な時間だった。
香港でのVIEXPOと濃厚で超美味しかった「北京ダック」の余韻を残し、深夜便で香港から、目的地オーストラリア・アデレードへと飛び立った。機内泊の強行軍だ。
(To be continued)