焼肉考 |
昨晩、遅い「お正月休み」に、ムショーに「焼肉」が食べたくなった。
近年、「焼肉」でも量はいらない。少量で、美味しい肉をワインと一緒に味わいたいと思う。僕自身、お腹一杯食べるような年代ではもうないのだ。
まして、僕自身東京から帰ってきてから数年はカネトクグループで鮮魚と精肉部門を担当していた時期もあり、「魚」と「肉」に関しては詳しい。
どちらも、捌いていたため、目利きができる。こうした過去のキャリアが、今ワインの世界でとても役立っている。だから、「魚」と「肉」を語らせたら、うるさいのである。
今回は、秋田和牛「極上」盛り合わせをオーダーする。さすが、「ほむら家」である。「極上」の名にふさわしいセレクションである。
僕らが、食べた順番で、その部位を解説してみたい。昔、勉強した知識(実学)は忘れないものだ。(参照 焼肉手帳)
1、カイノミ
中バラ(三枚肉)のうち、ももの付け根近く、サーロインに隣接した部位。味も見た目も三枚肉より、サーロインに似た、焼肉に最適の特上クラスの肉だ。肉質が柔らかいため、トップ写真の通りざっくりの厚切りが、歯ざわり、風味ともしっかりと楽しめる。食べ進むうち、いかにも肉らしい味に、独特の淡い香りがふんわりと重なってくる。これは、「肉好き」を喜ばせる理由のひとつである。食べ応えも申し分ない。タレで味わうのではなく、レモンが最高にこのテイストを引き立てる。
2、特上カルビ
カルビとは、韓国語で「肋骨」の意味である。部位では「バラ肉」で文字通り肋骨周りの肉の総称である。三枚肉ともいい、体前方の前バラ(三角バラ)と体後方のバラに大別される。その中でも「特上カルビ」は、前バラのうちでも特に第一~第六肋骨周辺だけから取れる最上級肉である。淡い紅色にまんべんなく脂が差した身は、脂の甘さも肉の味もそれぞれしっかりと濃い。歯ざわりもよく、脂と肉のバランスの良さに「美味しい」と声が漏れる。これも、タレで食べちゃダメ。レモンかわさびで食べるに限る。
3、ミスジ(三筋)
肩(ウデ)の一部、肩甲骨の裏側にある肉。1頭から平均5㎏前後。上(トップ)の写真のような霜降りが見事な最高級品質の肉は、わずか1㎏しか取れない稀少度が高い。稀少だからこそ、「焼肉」として品書きに載ることは少ない。よく和牛刺身とかタタキでよく出てくる部位でもある。「ほむら家」では、「極上」の品書きに登場するから、うれしい。「焼肉」通は、ミスジ(三筋)が出てくるだけで涙モノである。一口噛んでみて、この霜降りからは想像もできない歯ごたえのよさにビックリする。肉は、十分なコクを含みながら、舌触りはみずみずしく、しかもさっぱりしている。こうした端麗な味わいには、わさびがぴったりだ。
ここのわさびは、天然モノをすりおろしてくれるため、たまらないのだ。
4、特上ロース(サーロイン)
腰(ロイン)に近い部位のロース。ロースの最高峰とされる。3種類のロイン(リブロース、サーロイン、テンダーロイン)のうちでも特に肉質がよいことから、Sir(サー)の称号がイギリスのジェームズ1世から与えられたエピソードを持つ。脂を多く含む肉は、きめ細かくやわらかい。肉のコクと良質の脂がともに溶けて、しっかりと濃い風味が口の中に広がる。「焼肉の王道」がここにある。塩を少しまぶし、あまり焼かずに「レア」で食べるに限る。思わずは「これは、レアで食べなきゃ、このテイストが理解できないぞ!」と声を出し仕切っている僕がいた(笑い)。もちろん、絶対にタレでは食べちゃだめ。レモンかわさびに限るが、僕は「レモン」が一番だ。なぜなら、脂の甘さが、いっそうレモンによって引き立つからだ。すべてワケがあるのだ。
5、特上ヒレ(シャトーブリアン)
最後は、シャトーブリアンだ。ヒレ(フィレ)というよりも格好いい響きがある。脂肪は、ロースの半分、そして柔らかさはダントツ。部位的には、サーロインの内側で腰椎に沿った肉である。フランス語では、フィレ、英語ではテンダーロインだが、シャトーブリアンは、そのヒレの中の中心部分。フランスの美食家であり作家であったシャトーブリアン卿が好んで食べたことから、この名前が命名された。ヨーロッパでは、この部位だけは「生」で食べる。だからクセも臭みもなく、ほのかな甘さがやさしい。歯にしみとおるような、類稀な柔らかさが身上だ。やわらかい肉が大好きな日本人が最も愛する最上級肉だ。もちろんレモン以外ない。
本当に美味しい部位を味わった。肉は「意欲」を掻き立てる。肉を食べると「やる気」が沸いてくる。5,6日と遅い「正月休み」。スキーや温泉を楽しみ、仕事外の会議に顔を出し、読書三昧(三冊読破)。そして「焼肉」で翌日からの仕事への意欲を掻き立てる。