PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ(バッジオ) |
奇跡が起きる。と思った。一度だけ日本が勝てるチャンスがあった。延長戦で投入した玉田がゴール前で1対1になったときだ。玉田は、シュートを打たず、中村憲剛へ折り返しパス。僕は、岡野の役割を玉田に賭けていた。たら、ればは、死語ではあるが、もしシュートを打っていたらと思う。このシーンだけ、何度も僕の頭の映像の中でリプレイされる。
延長戦でも決着が決まらず、天国と地獄のPK戦へ。
僕は、内心「これしか日本が勝てるパターンはない」と読んでおり、「ヒーローは守護神川島だな」とつぶやいた。
しかし、不運にも3人目駒野がクロスバーに当たり外す。先行のパラグアイ全員が決め5-3で勝負が決した。PK戦は、残酷だ。誰かが外さないと勝負は決まらない。
駒野は、試合終了後泣き崩れる。松井や稲本などが、駒野の肩を抱き寄せ慰めている姿が涙を誘った。負けたのは、誰のせいでもない。運が悪かっただけだ。前を見据えて堂々と帰国して欲しい。この日、駒野は、一言も語らずピッチを去った。
前回のW杯の決勝イタリアVSフランスは、延長でも決まらずPK戦へ。フランスの名キッカーのトレゲゼが外しイタリアが栄冠に輝いた。PK戦はドラマになる。僕は忘れられない光景がある。1994年アメリカ大会だ。決勝のイタリアVSブラジル戦。この一戦もPK戦。イタリアのエースストライカー”ロベルト・バッジオ”が強烈なPKがゴールポストに当たり外す。まさかのシーンだった。
その時、バッジオの語った言葉が
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」
「PKを決めても誰も覚えてないが、PKを外したら誰もが覚えている」
けだし名言である。
PK戦の5人に選ばれただけでも光栄なのだ。イタリアの英雄バッジオの言葉を駒野に捧げたい。
W杯サッカー南アフリカ大会は、日本中を熱くし、寝不足にした。しかし、23人の日本代表は日本人に「勇気」と「挑戦」の心をTVを通じて教えてくれた。
パラグアイ戦TBSが開局以来の高視聴率を獲得した。57%台だ。しかも午後11時からのゲームでだ。つまり深夜の時間帯での驚異的な視聴率だ。
120分+α(アルファ)の死闘を演じた日本代表に拍手だった。岡田監督の敗戦の弁も男らしかった。「選手はよくがんばった。負けたのは監督のせい」と。
4年後は、サッカーの聖地ブラジル大会。おそらくブラジル大会は南アフリカ大会の数倍もヒートアップするに違いない。本田、長友、森本、内田、香川、松井、長谷部、川島などが、中心となってベスト8を目指してくれるものと信じている。