田中克幸氏「さくらワインスパークリング」絶賛! |
上野のホテルにタクシーで到着したのは、午前4時近くだった。2時間ほど睡眠し、6時56分の朝一番の新幹線で秋田へ。もちろん、新幹線では、約4時間爆睡だった。
今回のセミナーは、東京・永田町のヨーロピアン・ダイニング「BITTE」で開催された。主催は、地方独立行政法人岩手県工業技術センターである。今、岩手は県を上げて、首都圏での売り込みに躍起になっている。先週まで名古屋圏で「岩手フェア」を各所で行っていた。今週からは。東京の百貨店やレストランなどとタイアップして「岩手の食材フェア」を実施している。
このセミナーのテーマは、「知られざる岩手のワイン」というテーマで、ワイン評論家の田中克幸氏が講師を務める。昨年の9月に「岩手県果実酒研究会」が田中先生を招いて、ワイナリーを訪問し、ワイナリーや関係者と熱い議論を交わし、クリニックを行い、岩手ワインの方向性を示した。
そして田中克幸氏は、主筆を務めるワイン専門誌「ワイナート」に「誰も知らない岩手のワインの、誰も知らなければならない偉大な可能性を、知った」とポテンシャルの高さを協調した一文を載せた。今回は、東京のワイン関係者やワイン愛好家、そしてワイン流通者を集めての講演だった。
まずは、その「ワイナート」に執筆された田中克幸氏の名文を紹介する。
(ここから)
タイトル「劣悪な気候条件を上回るテロワールの力 ”知られざる岩手のワイン”」
サブタイトル「日本を意識しない世界基準のポテンシャル」
岩手県で、素晴らしいワインを見つけた。いかなる留保もなく、素晴らしい。正直、最初は期待していなかった。岩手県は自然条件が厳しく、日照量、気温、降水量すべての数値から「ワインを造るのはやめたほうがいい」という結論を書きたくなるような土地だからだ。しかし、ひと口飲んで、経験したことのある多くの日本のワインとの決定的な違いに気づいた。いわゆる"日本のワイン”の味がしなかった。世界中のすべての優れたワインと同じく、混濁感がなく、ミネラルの緻密な構造を中心にして、すっくと格調高く口の中で立ち上がり、なめらかに広がり、気配の力を持続させた。ようするに、よいテロワールの味がした。
調べてみると、ワインを産出する県東部は、もともと日本ではない。北上川より東、早池峰構造体の南は、かつての巨大大陸ゴンドワナの一部だし(オーストラリアより分裂したものと考えられている)、北はかつてのアジア大陸の東端で、後に形成された日本列島に合体したものだ。だから県東部の地質は、日本の中では例外的に古く4億年以上前にまで遡り、蛇紋岩、花崗岩、粘板岩、石灰岩が見られる。最悪の機構にもかかわらずこれだけ次元の異なる質を示すのは、モーゼルやアンジューやバロッサなどに匹敵するほど古い地質学的土壌の優位性と、それに合った品種の選択以外に、私には理由が考えられない。
(ここまで)
「ワイナート」に書かれている内容を前提に、田中克幸氏のセミナーが始まった。
日本のワインの今までのイメージ。「やさしい」「軽くて飲みやすい」を前面としたした造りが多く、「弱さ、とっつきやすさ」といったイメージを持つが、それが日本のワインの「本質」なのか?といた田中流の疑問符から切り出された。
日本の本質とは、J.P.サルトルが、京都の龍安寺の石庭を見て「TENSION!」と声を上げたという。つまり純粋さの中に「TENNSION」(緊張感)があると表現した。これこそ、日本を表現した見事な言葉である。田中氏は、日本的なものを多くの人は「ゆるいもの」「癒し的なもの」とイメージされているが、実はそれらには「緊張の美」を感じないと説く。日本の美の本質は、「緊張感」なのだ。
日本のワインでも、土壌と品種があっていない。つまり多くはテロワールが合っていないワインが多い。だからピントが合っていない。極端な例だが、DRCはフォーカスが合っており、ピントがあって、抜けがいい。
「いいとは、何だ」つまり、いいワインの価値尺度を明らかにすると、ユニバーサルなもの、バリエーションに富んだもの、クオリティが高いもの。これらの価値尺度に共通するものは「抜けのよさ」「複雑さ」「余韻の長さ」の3つを提示する。まさに、品質とテロワール、ストラクチャー(構成)に尽きるという。世界最高品質のDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ)は、「ピノ・ノワールを造っているとは言わない”リシュブル”を造っている。”ラ・ターシュ”を造っている」と表現する。そこには、恐るべき「TENSION」が感じられる。DRCを例にとり、「いいワインの価値尺度」をまとめた上で、岩手ワインで先生がピックアップした6つのワインが登場した。
さくらワインスパークリング(弊社企画プロデュース)、山葡萄クラシック(くずまきワイン)、紫波物語リースリング(無ろ過生詰め)(自醸ワイン)、自醸(ロゼ)辛口メルロ、五月長根葡萄園リースリングリオン(エーデルワイン)、ハヤチネゼーレ”ツヴァイゲルトレーベ樽熟成の6種類について解説が始まった。
このブログでは、手前味噌ながらも、小西亨一郎企画・プロデュースの「さくらワインスパークリング」についてのみ田中克幸氏のテイスティングコメントを載せたい。(あとの5つに関しては、機会を見て、その中で僕が印象が高い数点に関してふれたい)
「小西さんがプロデュースした素晴らしいスパークリング。絶妙なバランスで、先ほど説明した”いいワインの価値尺度”の本質がこのワインにはある。つまり、酸とミネラル感が絶妙だ。酸がぼけない。強調される。舌に垂直に浸み込む感覚がこの"さくらワインスパークリング”にはある。浸み込み感は、スパークリングワインの価値尺度だ。シャンパーニュのグラン・クリュと並シャンパーニュとの決定的な違いはこの"浸み込み感”にある。ヴァレ・ド・ラ・マルヌは、フラットであるが、ブジーやヴェルズネー物は、浸み込み感がある。さくらワインスパークリングは、これらのシャンパーニュのグランクリュの著名産地物と共通項が多い。
イタリアのフランチャコルタは、残念ながら浸み込み感があるものが少ない。それはなぜか?土壌に合った、テロワールに合った正しい品種を使っていないからだ。このさくらワインスパークリングは、北東北ならではの”山葡萄系品種”を使用している。これらは、テロワールという概念が出来る前から、野生的に生息していた品種であり、自然が選んだ品種だからだ。だから、秋田や岩手といった劣悪たる気象条件でも素晴らしい実をつける。まさに、自然そのもののソヴァージュを感ずる山葡萄系が北東北ではいいに決まっている。勝手に自然が選んだものだからだ。なんの工作もない。だから、品種とテロワールの相性が完璧だと言い切りたい。
山葡萄品種などというと"色物”といった見方を日本のワイン通の方からされるかもしれないが、気にする必要は全くない。このワインには、凄さと複雑性を感ずる。」
田中克幸氏は、このさくらワインスパークリングの特長を、①浸み込み感があるミネラル、②フォーカスが合っている。つまり品種とテロワールが完璧である、③テンションの高さ、④テクスチャーの緻密さを上げて説明してくださった。
まさに、田中克幸氏から絶賛されたのだ。これほど名誉なことはない。
その後のコメントがいい。「小西さんはいつも”世界初のさくら天然酵母”を前面に出されているが、このさくらワインスパークリングは、本質のよさ、シャンパーニュに負けない浸み込み感の高いミネラルを前面に出して、説明されたほうがよい」とアドバイスをいただいた。
会場には、昨日辰巳琢郎さん(俳優・日本のワインを愛する会副会長)から電話をいただいて、この会場場所を教えていたため、来場してもらい、早速「さくらワイン」と「さくらワインスパークリング」を辰巳琢郎さんが企画するワイン会で使用していただけることになった。神戸の会場に8本、秋田市の瀬下建設工業のワインパーティで36本の発注を頂戴した。
この会を通じ、多くの生産者や岩手県の幹部の方、首都圏のワイン関係者の方々と親交を深め、大いにアピールさせていただいた。また、岩手の食材も懇親会で提供され、ワインとともにこの会を盛り上げた。
秋田の僕まで声をかけてくださった福井富士子さん(ソムリエ協会北東北支部長)や岩手県の寛容さに感謝したい。岩手ワインというブランドを作り出す動きを感じた一日だった。秋田ワインの方向性を打ち出すのに、最高のヒントになったことは言うまでもない。やはり、動くことによって、指針や戦略が見えてくる。忙しい時期ではあったが、時間を作り出し、東京のセミナーに出かけた収穫は大きい。