大曲の山の手ホテルで、「極上美食倶楽部」が、16日(金)、17日(土)の二日間開催された。
この「極上美食倶楽部」とは、一年に数回、日本をはじめ世界中の美食家があこがれる「極上の食材」を使用した料理と、それに合う最高の相性のワインや日本酒をセレクトした、ラグジュアリーな食事会。しかも、最高のおもてなしとサプライズを用意して、対応することを、コンセプトにしている。
この「極上美食倶楽部」は、昨年末山の手ホテル20周年を機に、プロジェクトを立ち上げ「極上美食倶楽部」を発足させた。このプロジェクトに、僕がアドバイザーとして招聘され、様々なアイディア提供させていただき、共創したものだ。
この二日間のために、費やしたエネルギーは相当なものだった。山の手ホテル側でも、企画、営業、料理、サービスと全部門が、一致団結し最高のパフォーマンスをお客様に提供するために、数か月前からプロジェクトを組んで動いていた。まさにチームワーク力が問われるものだ。
今回は、年明けから食材選びに奔走した。僕は、ナビゲーターとして山の手ホテル料理人と企画部長と一緒に同行し、生産者の下へ通った。生産者の熱き思いを伝えるためだ。こうした生産現場や哲学を知ることで、その素材を理解し、どのようにそれを活かしていくのか、すべて現場が教えてくれる。
現場からヒントを得て、調理法を試行錯誤していく。今回は、最高の素材を生かした料理を、お客様に感動していただくというミッション(使命)がある。いかに、お客様が喜んでいただき、満足感や感動を覚えていただけたかが、評価のポイントである。
この二日間を検証し、総括してみたい。
テーブル設営は、山の手ホテルの景観を生かし、緑美しいチャペルと芝生をガラス越しに眺めながら、お食事をしていただくように配置した。また、料理パフォーマンスも直接お客様に見ていただきたく、今回のテーマである
「極上ステーキ三昧に、熱狂する!」を、あえて実践するため、料理台も設えた。
午後5時から、スタッフミーティングで今日の流れを徹底する。あらゆるケースを想定しての、打合せや準備は、さすが山の手ホテルであり、徹底している。
二日間の「極上美食倶楽部」のメニュを紹介しよう。
13品8皿のこだわりの素材を使用し、手の込んだ料理の数々である。とにかく、素晴らしい素材(食材)を厳選したものだ。「極上美食倶楽部」の名に恥じることなく、数か月をかけて、食材を予約し、取り寄せたものだ。
ワイン&日本酒リストも次の通りである。
こちらは、料理に合わせ、僕が厳選したものだ。ワインや日本酒は、いかに料理を引き立てるのか、それによってさらなる美味しさを増幅させるものである。それを最良のマリアージュと呼ぶ。今回は、料理人との打合わせで、ソースと素材確認を徹底的に行い、何度もソースをなめ合い、理想的なマリアージュを追及させていただいた。
まずは、オードブルとして5品を塗りのお膳に鮮やかに盛り付けての提供である。
角度を変えて、
市松文様のお重の中には、下から
「伊勢海老新緑和え」、上に
「はまぐりの柚子グラタン」
伊勢海老は、活き伊勢海老を使用し、アボガドソースを使い、新緑の緑を演出したもの。はまぐりも同様、活きはまぐりを使用し、ベシャメルソースをからませて、グラタン仕立てにしたものだ。中には、今が旬の男鹿産とろとろわかめも使われており、面白い食感を演出している。
その上の透明のグラスに入ったものは
、「翡翠ロワイヤル」。これは、大仙市中仙清水産の高品質枝豆の「翡翠(ひすい)」を使用し、オマール海老のコンソメを用い、洋風茶碗蒸しに仕立てたもの。ゴマの風味も香ばしい。
時計回転に左回りで、左上には「
酒粕入りのチーズ」。これは、羽後町の明通チーズ工房が、さくら酵母を使用して作ったチーズに多量の酒粕を織り交ぜ、つくった和風チーズだ。これは、この料理会のため、特注したものだ。
碧いもみじの下が、「
ホンナ新丈白線揚げ」。これは、海老、帆立、烏賊、筍の新丈をホンナで包み、卵白を泡立てフリッター風に揚げたもの。
これらの5品には
、「刈穂・活性六舟吟醸スパークリング」を合わせた。この刈穂・活性吟醸酒は、瓶内二次発酵させたもので、上品な泡立ちと爽やかな香りと、穏やかな飲み心地があり、和テイストのお食事には、最適と判断した。
次は、魚料理である。
「
ノドグロのシャンピニオン オリジナルソース」と付け合せに「
たらば蟹の唐墨バター焼き」
これは、旬となった夏の高級魚「ノドグロ」近海モノをソテーし、マッシュルームをふんだんに使用しシャンパンをベースにバターと醤油で、オリジナルソースをかけたものだ。このソースは、絶品だった。シャンパンならではの絶妙な酸味とマッシュルーム(シャンピニオン)の甘味のバランスの良いもので、隠し味の醤油が、日本人の繊細な味覚に実にマッチする秀逸ものだった。
タラバ蟹も殻つきを使用し無塩バターで焼き上げ、唐墨をすりおろししたものだ。
この皿には、迷うことなく、
ブルゴーニュの銘醸地ムルソー村のシャルドネを使用した、少し若いヴィンティージで冷涼な年である2011年物で、酸味が引き立つ白ワインを合わせた。これは、ソースがシャンパーニュベースであるからで、酸を合わせる必要があるからである。また、バターが両方のソースや焼きのベースに使用されていることから、マロラクティック(乳酸)発酵をし、さらに木樽熟成させたものを選んだ。木樽によるバニラ・エッセンスのような甘味が、シャンピニオンともよくマッチした。
いよいよ、次から「三役揃い踏み」=「ステーキ三昧」の三品のステーキの登場である。
「
石黒農園産”ホロホロ鳥”の丸焼き(わら焼き) フォアグラ添え~粒マスタードと赤ワインソース」
これは、事前に燻製丸焼きにしたホロホロ鳥(岩手・花巻・石黒農園)をさらに藁(わら)焼きして、藁(わら)独特の香味を付け、温かい状態で、お客様に提供するもの。打川総料理長の藁焼き点火で、藁(わら)に火が付き燃え上がる様には、「おおっ!」と歓声が出た。それと同時に、煙が会場内に立ち込める。このため、事前にスプリンクラーチェックの煙探知装置を切っての、実演パフォーマンスだった。
日本で唯一ホロホロ鳥を飼育する「石黒農園」は、昨年NTVの「青空★レストラン」で取り上げられて以来、全国の著名フランス料理店からの注文が絶えないという。それもそのはず、フランスからの冷凍モノでは味わえないフレッシュ物ならではの旨味や味わいが、多くの美食家を唸らせているからだ。
石黒農園の石黒さんとは、友人であり、1月にスタッフで訪問し、今回の提供と相成った。コラーゲンたっぷりの胸肉と旨味と程よい脂分がたまらないもも肉には、ブルゴーニュ・ディジョン産の粒マスタードで味わっていただいた。また付け合せが豪華だった。
チルドで空輸したフォアグラを使用し、濃厚赤ワインソースで味わっていただく。フレッシュ物フォアグラの最大の特徴は、「ソテーしても縮まないこと」だ。表面をカリッと焼き上げ、中ふんわりといった雑妙な焼き加減だった。
このホロホロ鳥には、ブルゴーニュ・コート・ド・ボーヌの銘醸地「ポマール」を合わせた。生産者は、今注目のビオディナミ農法にこだわるドメーヌ・クリストフ・ヴィオロ・ギュイマールの「
ポマール・ラ・ヴァッシュ2010」である。ポマールは、ご存じのとおり、ピノ・ノワールも力強く、しなやかなである。だから、旨味のある鳥料理には、最適なのだ。ほどよいタンニンと粒マスタードや肉の旨味を穏やかにし、美味さを増長させる。このワイン、天下のアラン・デュカスでもオンリストされている稀少な自然派の赤ワインである。「ワインが美味しい!」という声が漏れ、担当としてもうれしい限りだった。
続いては、「”
白神あわび”炭火おどり焼き 山菜」
これは、今注目の「白神あわび」を取り寄せしたもの。しかも特大サイズである。当日発送し、当日に到着するもの。秋田県内だからできる離れ技でもある。
その特大の活きあわびを炭焼きコンロで、直接焼き上げる。会場には、磯の香りが漂う。「匂い」や煙も演出の一つである。アワビが踊る様やそれを直接その場で、切り分ける様子も、確かめながら、配膳されるのを待つお客様。当然、会話も盛り上がる。「これは、臨場感あり、期待感が増しますね」と声かけられた。
蝦夷あわびは、実にやわらかく、しかもミネラリー。それに、合わせたのが、「
シャンパーニュ・グラン・クリュ ブラン・ド・ブラン キュヴェ・シンフォニー」である。グランクリュ村であるオジェ村の100%シャルドネを使用したシャンパンである。ミネラリックで、酸もきれい、しかも爽やかで旨味さえのる逸品だ。「うわあ、これも合う!」との声が上がる。付け合せの山菜すら、ほんのりと苦みをシャンパーニュが同化させマッチする。
ステーキの最後は、「
特選和牛”由利牛”シャトーブリアン”~山葵 岩塩、藻塩、紫蘇の実とアンチョビソース」
ステーキ三昧の大トリは、両日のハイライトである
特選和牛「由利牛」(A5クラス)の極上稀少部位であるシャトーブリアンだ。これは、高級部位のヒレの真ん中に位置し、わずかしか取れない「幻の部位」なのだ。まさしく美食家であったシャトーブリアン卿が、「これこそ、ステーキの最上のモノだ」と絶賛したことから、その名がついた絶品である。稀少部位がため、数か月前からお願いして取り寄せたものだ。
この贅沢な極上素材を、太田洋食料理長がフランベする。こうした料理パフォーマンスは、確実にお客様の心をとらえている。カメラを向ける方が、実に多い!
これには、山葵、岩塩、藻塩、紫蘇の実とアンチョビソースの4つのつけ物で、シンプルに召し上がっていただく。塩胡椒でミディアムで焼き上げているため、そのまま召し上がっても十分に美味しいはずだ。
このシャトーブリアンのステーキには、「
クラレンドル・ルージュ・バイ・シャトー・オーブリオン2006」と合わせる。こうした極上品には、熟成をしたなめらかな赤ワインがよく合う。今回は、ボルドー・メドック格付け第1級のシャトー・オーブリオンがリリースした赤ワインをサーブスする。このワイン、昨秋の日経新聞の「NIKKEI プラス1」の何でもランキングワイン編で見事第1位に輝いた逸品ワインでもある。
お客様からは、「小西さん、これ最高のマリアージュ!」だとか「こんな美味しいお肉味わったことがない!それがさらに美味しくなるワインよ!」といった声が多く聞かれた。
今日のパンは、魚料理の時からサービスされる。白神こだま酵母パンと小岩井バターである。
最後のデザートは、日本の名物シェフである熊谷喜八シェフ監修の「
イチゴのサバイヨーネ」である。
このデザートで使用しているイチゴがすごい!地元内小友の高級品種「やよい姫」である。「やよい姫」は、栃木の名品「とちおとめ」と「とちホッペ」の交配品種で、大きい品種のイチゴであり、酸が美しく、甘みも上品という素材だ。これをベースにし、上にカスタードクリームをかけ、バーナーで焦げ目をつけて、提供する。これもすべてライブで、お客様し素材を見せてからカッテングし、クリームをかけ、バーナーパフォーマンスを見せる。
そして、お茶は「山の手ホテルオリジナル焙煎コーヒー」か「紅茶 アールグレイ・スペシャル」を選んでいただく。カップ&ソーサーも凝った陶器でお出しする。
最初から最後まで、お客様に喜んでいただけるように、工夫を凝らした演出だった。もちろん、食材は、なかなか秋田では食することのできない逸品を用意し、飽きないフルコースに仕立てた。こんな三つの豪華ステーキを味わえる機会は、そんなにない。記憶に残る魅せ方に力を注いだ。
ワイン(日本酒)も、すべては料理をさらに引き立て、美味しくさせる5種類を厳選した。
こうして、山の手ホテルの記念すべき第1回「極上美食倶楽部」の会が二日間に渡って開催され、無事賞賛をもって終了した。料理、飲料、ワイン、日本酒、サービス料、税込みで20,000円と高額な会ではあたっが、「最高に満足!」「ぜひ、次回も!」というお客様が多く、ある程度の及第点をいただいたものと思っている。
ただ、まだまだ反省点が多く、これらをさらに改善し、ブラッシュアップすることで、確実に次回につながるものと思う。山の手ホテル(川端グループ)の料理人チームのポテンシャルは高く、ますます今後に期待したいと思う。
次回の第2回「山の手ホテル極上美食倶楽部」は、秋に開催される。テーマや内容は、これからだが、お客様の期待以上のものを提供していきたいと思う。こうしたガストロノミー文化が大曲で育っていくことこそ、この業界に生きていくものとしてうれしい限りであり、最大の協力は惜しみないつもりである。
この「極上美食倶楽部」は、会員制である。もちろん、無償で誰でも会員になれる。美食に興味のある方、大歓迎である。その都度、会員に案内が届くのである。お楽しみ下され!
今回、参加していただいたお客様には、心から感謝申し上げたい。ありがとうございました。