新作花火コレクション2009 「KONYの目」第1回 |
昨日のブログで予告したとおり、本日から5回に渡って、新作花火コレクション2009に関して、小西亨一郎の考え方、意見、分析を述べていきたい。
第1回目のテーマは、「新作花火コレクションの存在意義」です。
今年で、新作花火コレクションは、18回目を数える。今春、高校を卒業する人々と同じく、年齢(回数)を重ねてきた。そう考えると、月日の流れは、速いものだ。僕も30歳の若き頃より運営にかかわる。スタッフメンバーは、当初からほとんど変わらぬ顔ぶれであるため、みんな少しは年を取ったし、大人になってきた。ある意味では、感慨深い。その間、多くの花火ファンや熱意のあるスポンサーの方々に支えられ、今この大会が存在する。
確実に多くの方々に「認知」され、成長していっている大会のひとつであろう。このコレクションから世にでた「花火作品」は多い。新作花火コレクションの名に恥じない作品が、毎年大曲から、発信されていく。
僕は、いつも言っているが、「新作花火コレクション」は、花火界の「パリコレ」なのだ。その年の花火の流行や傾向を理解する意味では、チェックしたい花火大会だろう。
この「新作花火コレクション」は、大曲花火倶楽部と新作花火コレクション実行委員会が主催で、日本煙火協会青年部が共催である。だから、参加花火作家は、年齢制限がある。最大50歳までの「青年」にエントリー資格が与えられる。
この大会は、花火作家固定制ではなく、入れ替え制というシビアな大会である。地元枠を除き、前年審査得票により、入れ替えが検討され、毎年新人がこの大会に選抜される。
使用する花火玉は、わずか15発。いずれも小玉で、その内訳は、4号玉10発、5号玉5発。この15発の組み合わせで、花火作家独自の「テーマ」を構成し、それをいかに表現し、アピールするかが、問われる。
花火作家は、審査員や大観衆の前で「お立ち台」の上で、スポットライトを浴び、マイクを持って、自分の作品を、プレゼンティーションする。「花火作家の顔の見える大会」というのは、これからきている。このプレゼンで、自分の作品の企画意図や表現の方法やこだわり、工夫、思いがわかる。プレゼン度胸も重要。このプレゼンが終了後すぐに作品の花火が打ちあがる。
コレクションでは、敬意を込めて「花火作家」と呼ぶ。いわば、コレクションにおける「花火のデザイナー」として位置づける。この大会では、自らがデザインし、精魂込めて設計した製作者だから、花火作家なのだ。この世界では、いくらでも輸入したり、優れた花火玉を買って上げることは、可能だ。しかし、自分のオリジナリティを発表する「場」でもあることから、あえて「花火作家」と呼んでいる。「花火師と呼んだほうが、いいのでは」といった意見もあるが、花火師は、花火を打ち上げる人の総称といったイメージがあるので、あえて差別したいと考える。
審査基準は、次の3つ。
①テーマ表現
テーマに基づいた表現を花火でなされているのかが、ポイント。
技術力があっても、テーマとの関連性がなければ、得点は伸びません。
これが、最もウエートの高い部分だ。テーマにあった独創性や表現力が評価される。
②技術
花火単体としての技術を評価する。形状、色使い、リズム感、昇り曲導、バランス、難易度、新作への挑戦などを審査する。審査員の力量も問われる部分でもあるので、専門審査加点を実施して、いい花火には、差をつけるべく配慮している。
③安全性
花火の基本は、いうまでもなく「安全」だ。だから、この審査基準も専門審査員が、安全性を満たさない作品や玉に関して、減点審査を行っている。実に厳しいジャッジを行っており、時に、芸術系の審査員と議論の対象となる場合もあるが、譲らない姿勢を示す。
例えば、打上げる高さは、各号数にあった適切な高さを要求するし、地上に星や火の粉が落ちては、危険とみなし減点対象になる。
こうしたシビアな観点からもジャッジし、総合的に判断して賞を決定する。
賞は、以下のとおり。
金賞(1名)
銀賞(1名)
銅賞(3名)
審査員特別賞(1名)
が、大会における褒賞である。さらに近年は、花火鑑賞士による投票が行われ、「花火鑑賞士賞」が授与されている。
新作花火コレクションの運営は、NPO法人大曲花火倶楽部の会員を中心とするボランティアの人々で運営されている。今では、全国から花火ファンが集まり、大会運営にボランティアとして協力してくれている。年々ボランティアスタッフが増えていっており、ありがたいことである。その背景には、大曲花火倶楽部が認定している「花火鑑賞士」制度が貢献しているといえよう。
こうして、いろんな方々に支えられ、自ら進んで運営協力をし、大会を盛り上げていくという「モデルパターン」ができつつある。
新作花火コレクションは、すばらしい花火作家に学び、ともに育ててきたものと考える。若手花火作家は、未来の日本花火界の財産と考え、日本の花火の伝統を継承する担い手とともに、この大会を開催できることは、「大曲の花火」の継承を底辺から支える役目も果たしているものと考えたい。
こうした積み重ねは、人的コミュニケーションとして生きてくる。参加花火会社においても、代替わりしており、社長にかわり、若い息子さんがこの大会に参加してくる。その花火会社の理念や技術がしっかりと受け継がれていることを確認できるだけでも、僕はうれしくなる。
新作花火コレクションもだが、花火大会は、「熱意」と「研究心の高い」花火作家の心意気で成り立っている。そして、そうした彼らを「誠意」と「思いやり」で受け入れる体制作りができているかが、大会運営のバロメーターだろう。その根底には、「花火が好きなこと」。これなしには、語れない。新作花火コレクションの「熱さ」は、スタッフの「花火が好きなこと」という最低条件を満たしていることが、大きい。だから、楽しんで運営できるのだと思う。
花火研究家小西亨一郎「KONYの目第1回”新作花火コレクションの意義”」