KONYのオーストラリア見聞記その4「バロッサの誇り・ピーター・レーマン」 |
5月30日朝、南オーストラリアの玄関アデレードに到着する。オーストラリアは、晩秋ではあるが、快晴で日差しが強い。僕ら一行は、機内泊であり、少し疲れ気味。僕は、まだ歯も磨かず、無精ひげを伸ばしている始末。大津さん、星野さんの女性陣は大変だろうなあと思う。
一路南オーストラリア州のワインの聖地「バロッサ」へ。その前に、ホテルにチェックインをするらしい。ホテルは、バロッサ郊外の牧草地の丘の素敵なロケーションに位置する「Abbotsford Country House」に到着。待ちに待ったシャワーかと思いきや、「まだチェックインはできない。部屋の掃除が終わっていない」とのこと。しょうがなく洗面所で洗顔し、歯を磨くだけ。荷物だけを預け、かの有名な「PETER LEHMANN WINES」(ピーター・レーマン)に向かう。僕にとってもあこがれのピーター・レーマンである。
【PETER LEHMANN:洗練されたセンスの良さとテロワールを表現するワイン造り】
素敵なセラードア前で、オーナーと息子さんの二人が直々に僕らスペシャリスト一行を迎えてくれた。
テイスティングと思いきや「お腹がすいているでしょうから、まずはお食事を」と。この心遣いが素晴らしい。そして、接待上手でもある。なにせ、ピーター・レーマンは今では世界75か国に輸出している。昨日も台湾とフィリピンからお客様が訪れたという。家族経営だというが、この規模は、中堅レベルであり、企業として進化してきた証左である。
チキンパイに合わせて、セミヨンを合わせてきた。オーナーによれば、ピーター・レーマンは、なんとセミヨンから始まったという。1882年のことだ。ハンター・セミヨンが有名になる前に、この品種のポテンシャルを見出していた。だから、セミヨンの低アルコール(12度以下)で熟成による複雑さを増してくる効用も理解しているのだ。
昨年のエチケット変更の話が出た。「オーパス・ワン」よろしく創業者の「ピーター・レーマン」の顔のシルエットを描いたラベルは、大好評だと胸を張る。企業は、常に刷新し、進化していくべきで、統一性の高いブランディングが必要だったという。だから、一気に一新して、イメージ性を高める戦略をとったという。パンフ、名刺、企業ロゴにいたるまで、コーポレイト・イメージをヴィジュアライズし、ブランディングを進めてきたことが、よくわかる。
今年2012年のヴィンティージの話になると、ともに上機嫌な顔となる。「Very Very Best condition!」で、エプセプショナル(最高!で素晴らしい出来)と連発する。「ハッピーなヴィンティージで、1998年以来の笑顔の収穫となった」と顔を高揚させて説明する。乾燥的な年で、秋口の収穫時も雨が全く降らずに気温も維持できた。昼夜の気温差もあり、素晴らしい完熟ぶどうが収穫できた。その結果、白はピュアなもの、赤は濃い色合いで深い味わいのものができたと目を細める。2012年は、記憶に残る最高のヴィンティージだという。
食事と一緒に出たワインは、三種類。セミヨン、シラーズ、ボトリティス・セミヨン(貴腐ワイン)だった。特に、自家製レモンクリームケーキに合わせての貴腐ワインは、お見事であり、豊かな酸と複雑味のある上品な極上の甘さであった。このように、ワイナリーとしてのバラエティな品揃えを維持するため、要求の高いお客様の期待に応えるため毎年貴腐ワインにも挑戦する。
食事後は、セミナールームで、「ピーター・レーマン」の歴史や歩みのレクチャーを受けた後、7種類のテイスティングとなる。特に冷涼品種は、イーデン・ヴァレーにも畑を持つ。今では、150の契約農家と手を結び、900の畑を確保している。しかも異なる16の土壌を把握している。そのテロワールを表現するワイン造りを目指して、進化を続けている。その伸び率は著しく、ピーター・レーマン親子は自信に満ち溢れていた。それは、最後の言葉に集約されていた。
「すべてのバロッサのワインは、グラスを通して理解できる。つまり、グラスの中に真実がある。すべては、ぶどうが決定することだ」
テイスティングでサービスされた7種類。
①リースリング 2009
②セミヨン 2006
③VSV・ルーディガー・カベルネ・ソーヴィニヨン 2009
④メンター・カベルネ 2008
⑤VSV・ルーディガー・シラーズ 2009
⑥8ソングス・シラーズ 2007
⑦ストーンウエル・シラーズ 2008
オーナーは、「1840年に東ドイツから移民してきた。いつも、オリジナリティ豊かなワイン造りを目指してきた。だから、ニューワールドといわれるのは心外だ。僕らは、バロッサにドイツ魂を持ち込んだと自負している」と語った。バロッサのドイツ系コミュニティを大事に考え、地域や家族を最優先しているという。彼らが住むタナンダの街は、人口約2万人だが、22の教会があり敬虔なキリスト信者の多いところである。そんな気質から「ドイツ移民としての誇り」が伝わってくる。ますます、ピーター・レーマンが好きになる僕がいた。
(To be continued)