グランドパレス川端第8回悠食倶楽部「春のおもてなし」 |
4月12日、恒例となったグランドパレス川端の第8回悠食倶楽部(=美食会)が開催された。今回のテーマが「春のおもてなし」。コンセプトは、春の旬な味覚をグランドパレス川端の料理人がひとつの作品に仕立て上げたものだ。つまり、洋食、和食、中華の料理人のコラボレーションで、「春のおもてなし」というテーマのコース料理にしたものだ。
僕は、東京から戻るやいなや、この会場に妻と一緒に直行した。ワイン納品業者として、また個人的にも、この美食会はいつも楽しみだからだ。
それにしても、10皿の料理(+アペリティフ、お茶)は、まるで芸術作品のように美しかった。皿のセレクションといい、ソースのペインティングやカラーコーディネーションといい、センスあふれる作品でもある。「料理は、目でも楽しむもの」といった見事な色合いが、食欲をそそる。料理については、一品ごと総料理長の伊藤幸一さんが説明し、会が進行されていく。
今回の料理について僕なりの感想を加え、紹介してみたい。
・アペリティフ シャンパンカクテル
洋ナシベースのスパークリングにいちごカット2切れとブルーベリー1個を入れたもの。フリュート・グラスでのサービスだから、フルーツがなかなか食べることができなかったものと思われる。僕は、スプーンで吸い上げたが、周りの人たちは飲み込もうと頭を上にあげ試みていたみたいだが、女性は、首を見せたくなく苦労したものと思われる。ここでは、クープグラスを使用するほうが賢明だろう。アペリティフは、むしろシェリーとか吟醸酒もしくは、辛口スパークリングのほうが、ベターなのではないか。
・前菜
蟹のブランマンジェ WITH ジュレ
フォアグラのスティック
鴨フュマージュ ミルティーユソース
帆立貝と鱒のルレ 二種卵添え
菜の花 生ハム包み
鯛のカルパッチョ わらび味噌風味
手の込んだ前菜である。ズワイ蟹入りのクリームミルクを固めたもので、かつてフランスの宮廷料理(デザート)の応用編だ。また、フォアグラの小麦粉皮で揚げたスティックも絶妙の食感だった。スタートの前菜からも、和、洋、中のエッセンスが盛り込まれており、料理の遊び心を感ずるものだった。
・季節の野菜とハモンセラーノを煮込んだスープ
中華よ洋食の融合。肉入りワンタンと季節野菜が具であり、スペインの高級生ハム”ハモンセラーノ”を刻み込み、コンソメで煮込んだスープ。コクと旨味のあるコンソメスープであった。
・お刺身「海の幸」
鮪、海松貝、赤貝、炙り金目鯛、雲丹
高級素材のおいしさを味わせてくれた。雲丹の器は、大根を料理人自らがくりぬいた自家製のもの。また、炙り金目鯛はとろみがあり、適度な炙りが味わいを品よくさせていた。旬ものの赤貝は抜群の食感で歯ごたえも香りもよく、「美しい食材」と思わずつぶやかずにはいられなかった。
・赤座海老と鳥鰈の二種ソース
まさに中華風海鮮料理。赤座海老の頭と尻尾も使用した見せ方も上手。海老は、甘めのあんかけソース、鳥鰈(かれい)はフリッターにして、辛めのあんかけソースで食べる。中華の甘辛をプレゼンした料理だった。
・蝦夷鮑と三種の味覚にして
・カリフラワーとトリュフのアンサンブル
・赤ビーツとオレンジ風味のラディッシュ
今回の美食会の白眉。実に色鮮やかで綺麗な料理。そして最高食材を惜しみなく使用した一皿だった。新鮮な鮑を三種の味で味わうという贅沢感があった料理だった。トリュフをふんだんに使用し、高級感を創出する満足感の高い「美しい料理」であった。
実は、僕はこのあたりで、視覚的にも量的にも十分な状態になっており、弊社がセレクトしたオーストラリアの冷涼地で栽培醸造されたシャルドネと合わせながら味わっていた。オーストラリアとしては、酸が豊かであり、料理をおいしくさせる。
・米沢牛フィレ肉のソティ
炭塩と赤ワインのエッセンス
高級和牛のソティを炭塩と赤ワイン煮込みソースで食べる面白さを提案したもの。レアソティだが、ローストしたような食感だった。僕自身、もう十分にお腹一杯の状態であり、このタイミングでの肉料理は少しつらいものがあった。せっかくのシェフ自慢の逸品も美味しく食べることができなかった。残念である。
手まり寿司と蒸し物お吸い物仕立てなど
・穴子裏巻き・馬肉・赤海老キャビア・パプリカ・菜の花の手まり寿司
・鮑・雲丹・蟹・海老の四宝蒸し お吸い物仕立て
・自家製香の物
目に鮮やかな膳がテーブルに運ばれる。「うわあ、まだ出てくるのか」といった言葉が「おいしそう」という言葉より先に出る。ここでは、お吸い物仕立ての高級茶碗蒸ししか喉を通らない。色彩豊かな手まり寿司は、持ち帰りたかった。あえなく、キャビアだけをつまみ、あとは残してしまった。もったいないの一言だ。
・桜ムースとバジルグラス
ラストのデザートは、別腹であり、受け入れ可能だった。春らしいピンク色したデザートムースと若草色したバジルグラスを「ほっとした気持ち」で食べる。
デザート酒として、出羽鶴謹製の「桜絵巻」という古代米仕込みのピンク色した甘口の清酒と合わせた。これはいける。
最後のお茶は、ハーブティ(レモングラス)を選択し、リラックスできた。
今年の「悠食倶楽部」は、素晴らしい素材のオンパレードだった。ただ、後半はもうお腹がいっぱいで食傷気味だったことも事実である。年配者の多いテーブルでは、あの量は、食べきれない。品数が多すぎたきらいもある。しかし、「お皿のアート」と呼ぶのにふさわしい料理人の感性には拍手を贈りたい。手間暇かけた料理も、芸術だった。何度も書くが、「美しい料理」であった。
ただ、お腹いっぱいの状態になると、「余韻」や「満足感」を味わえないのかもしれない。
今回、ワインはいずれも繊細な料理に合わせやすく、ミディアムスタイルで辛口の4種類であった。オーストラリアワインとフランスワインをセレクトした。料理を引き立てるタイプのワインであり、いずれも酸が豊かであり、よくマッチングしたと思う。ただ、指定ではなくお客様が自由に選ぶ方式を採用しているため、刺身に南仏のカベルネ・ソーヴィニヨン(赤)を合わせているお客様も多く、サービスマンが、「このお料理には、こちらのお酒をお勧めです」といった気配りがあればと思う。
また、料理レベルに合わせたお酒(ワインも含む)のセレクションが必要だと考える。
いずれにせよ、こうした会を催せる優秀な料理人が多く、その見事なコラボレーションコース料理は、素晴らしかった。まさに「悠食倶楽部」の名にふさわしい料理内容だった。さすが、グランドパレス川端である。次の美食会に、さらなる期待をしたい。
本日は、おいしゅうございました。