陸前高田「除夜の花火」 |
2012年「辰年」、龍のごとく昇る年と心に誓い頑張ります。
今年もよろしく御贔屓の程、お願い申し上げます。
さて、2011年12月31日大晦日は、歳末セールを終えた午後6時30分にカメラマンの後藤芳次さんが、準備万端で当店へ。
一年間を感謝をスタッフに伝えたあと、一度自宅へ。帰省中の弟家族や子供たちにも「大晦日に、被災地・陸前高田にいって花火を見届けてくる」と一言伝える。
今回の企画者であるチーム・クレッシェンド松田さんや本間さんの仲介役として、大曲の花火協同組合を紹介した縁もあり、この「鎮魂と再生そして立志を誓う花火」を見届けるため、大晦日の夜陸前高田へと向かった。
僕が、大晦日の夜に留守にしたのは、これが二回目である。一度は1999年大晦日。大地震後の台湾を勇気づけようと、大曲JC一行で台湾入りした。「がんばれ!台湾」をキャッチフレーズとして「台北花火説」が河川敷公園で「大曲の花火」を打ち上げた。花火で勇気づけるためだった。30万人を越える観客が涙し「日本から元気を貰った」と喜ばれた。
あれから12年が経つ。今回は、東日本大震災後の特別な大晦日の日。岩手沿岸部の被災地で唯一、夏も秋も「追悼花火」が打ち上がることのなかったのが、陸前高田であった。LIGHT UP NIPPONでも、あまりの惨状で安全を理由に開催ができなかった街である。
チームクレッシェンドは、「陸前高田を元気に」を合い言葉に、「花火で元気、勇気を」とこの花火を企画した。そして僕のところへ電話してきた。彼らの熱い気持ちに応えてあげたかった。僕は、小松煙火工業の小松忠信さんに連絡を取り、彼らを大曲で引き合わせた。
小松さんも大曲花火共同組合の4社に声をかけ、チーム「大曲の花火」としてバックアップすることになった。スポンサーからの資金集めは、東京の本間さんが中心となり頑張った。サントリーや日本IBMなどが大口協賛していただいた。
この夜、後藤芳次さんと陸前高田へと向かう。高速で湯田を過ぎたあたりから、夜空に満点の星である。天気にも恵まれた。大晦日の夜に二人で、北上のコンビニでおにぎりを買い込み食べる。
NHK紅白歌合戦をラジオで聴きながら、国道107号線を走る。午後9時50分、目的地の陸前高田に到着する。花火師が準備をする打ち上げ会場には寄らず、チームクレッシェンドの本部テントへ。
花火総括のボランティアスタッフみよしさんとお話をする。「大曲のみなさんのおかげだ。ありがとう!」と話してくれた。
当日は、放射冷却でマイナス7度を記録する。さすがに底冷えがする。打ち上げ会場は、津波で全てが流された気仙川流域の何もなくなった荒地であり、暗闇が広がる場所である。仮設商店街の自動販売機の灯が際立つところである。地元の方々のイルミネーション「絆」が目に焼き付く。
チームクレッシェンドのメンバーが、数箇所に灯光器を立て、道や鑑賞会場に明かりを灯す。僕らは、気仙川の堤防工事中の土盛りの上で、その瞬間を待つ。多くのスタッフやボランティア、仮設住宅で暮らす被災者の方々が、集まってきた。
チームクレッシェンド代表の一人である松田さんも設営拠点の高田モータースクールから駆けつける。彼もまた「大曲の方々のおかげ」とスタッフに話しかけてくれた。
スーパーマイヤの仮設店舗の前には、人だかりができている。多くの市民がこの花火を鑑賞するため、車でこの会場へと向かっている。車のライトの列がつながってきた。
いよいよ花火打ち上げの午後11時。大曲の4業者による「除夜の花火―鎮魂・再生そして立志を誓う花火」がスタートした。
(写真は、開会宣言をするみよしさん)
大曲花火化学工業、北日本花火興業、和火屋、小松煙火工業の順で花火が打ち上がっていく。澄み切った空気の中、そして冷気の中、星が輝く暗黒の空の中での花火の色は、とてもきれいだ。風も川下へと流れ、絶好の花火コンディションである。
大玉7号割物がドーンという轟音が三方が山にこだまする。心に響く音である。まさに鎮魂の花火にふさわしい。
大曲の各社は、自社の持ち味を出している。そして心の入った「割物」が空を彩る。拍手、拍手である。
北日本花火興業の型物「カエル」は、ジーンときた。地元に「カエル」、初心に「カエル」、家に「カエル」。そんな希望を込めた花火である。小松煙火工業の流星群光の連発に会場がどよめく。
ラストは、大曲4社による「陸前高田の四季」スターマインだ。音楽は、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」である。この音楽は、新作花火コレクションの2011年のフィナーレで「灯せ!希望の光」で被災地へのメッセージ花火の時に使った音楽だった。
春:大曲花火化学工業。萌黄色やサクラ色といった色使いがきれいだった。
夏:北日本花火興業。色鮮やかな青色と点滅。夏の輝く海の色を表現した。
秋:和火屋。これぞ和火屋の真髄というべき「和火」の連発。しっとりとした花火に唸った。
冬:小松煙火工業。銀世界を花火演出。ラストの7号一斉銀冠菊は圧巻だった。
最後は、拍手喝采!「ありがとう!」との歓声が心を打った。チーム・クレシェンドのスタッフやボランティアが抱き合っている。被災者の方々には、違うボランティアチームから「福袋」が配れている。会場は、温かい空気で包まれていた。
このラストのスターマイン「陸前高田の四季」は、大曲花火共同組合からの提供花火で陸前高田への寄贈花火とのことだ。粋な演出を大曲花火共同組合の4社は、やってくれた。心から大感謝である。
多くの方々が、久々にみる花火に涙して鑑賞していた。チーム・クレッシェンドが企画した花火に、元気づけられ、勇気づけられたことだろう。
2011年最後の時を、被災地陸前高田で「鎮魂、再生、そして立志を誓う花火」で迎えた。日本はひとつだ。多くのつながりと温かさを肌で実感できた。再生、復興は、これからである。新生の街ができることを祈りながら、新年を迎えた。