大曲の花火 KONYの目①「磯谷煙火店は画期的!クリエイティヴだ!」 |
今年の感想は、「レベルアップし、全体的に見ごたえのあった、工夫された作品が多かった。花火師のがんばりが伝わってきた」というところだろう。
個人的に、評価したい創造花火を書いてみたい。
「今夜、どこかのBARで~男と女の物語~」磯谷煙火店(愛知県)
昨年に引き続き、オリジナル収録のナレーション付き音楽で、「男と女の物語」を演出する。しかもカクテルBARでだ。磯谷煙火店ならではのオリジナリティの高さだ。この花火こそ、観衆の心を掴み、拍手が一番多かった。トータル的に磯谷の世界に引き込まれた。それほどインパクトがあった作品だった。
カクテルBARでは、マティーニとピーチフィズをサービスしている。そこまで具体的だが、ピーチ・フィズのサービス・グラスが間違っている(笑い)。
(マティーニを解説する・ここから)
マティーニほど数々の逸話に彩られたカクテルはほかにない。「カクテルの中の傑作」「カクテルの帝王」と称されるカクテル。映画『7年目の浮気』ではマリリン・モンローが、『007』ではジェームス・ボンドが好んで飲んだカクテルである。レシピは時代と共に甘口から辛口へと変化し、スイートベルモットを使っていたのが、今ではドライベルモットを使うのが普通になっている。超辛口好みの、かのチャーチルは、ドライベルモットの瓶を眺めながらジンのストレートを飲んでいたそうである。デコレーションのオリーブは、一般的に辛口カクテルのデコレーションとして使われる。甘口のカクテルにはチェリーを使う。オリーブの半径分の長さに切り込みを入れ、グラスのふちに刺すと出来上がり。その他にもカクテルピンにオリーブを指してグラスにさしわたしてもよい。もちろん、ジンとベルモット。少し緑っぽく見える。
(ここまで・参考サントリー・カクテルBOOK)
磯谷の創造では、チェーリーを添えていることから、甘口のスゥイート・マティーニを提供したことと考えられる。カクテルを知り尽くした巧妙な男が使う手段だ。スゥイート・マティーニなら、女性も飲みやすい。当然、ショートタイプのカクテルで、カクテルグラスでサービスする。お見事なマティーニを表現してくれた。
そして、もう一品は、ピンク系カクテル。製作チーフの加藤さんは、「ピーチ・フィズ」と答えてくれたが、専門的にいうとピーチ・フィズならロンググラスを使用しなければならない(笑い)。ま、そんな専門的なことなど、どうでもよい。
この花火やナレーションや音楽を通して、花火に目を釘付けにしたことのほうが価値あるのだ。こうした技法は、新たな意味で「創造花火」なのかもしれない。既存の音楽を使用せず、2分30秒の小番組を制作するかのように、知恵をしぼったことこそ、評価なのだ。
実にクリエイティヴな作業であり、画期的な花火であった。審査講評の中で、「ナレーションではなく、もっと花火で語ってほしかった」とも指摘されたが、それだけ「波紋」を呼んだ創造性豊かな花火だったということだ。
こうした話題性、記憶に残る斬新な、誰もがやらない(できない)花火に挑戦したことに拍手を贈りたい。
(つづく)