身近な食材の意外なマリアージュ |
第4回例会は、協会の樋口誠副会長を講師に「身近な食材の意外なマリアージュ」といったテーマで食材とワインを合わせていく実践的なテイスティングだった。
今回の身近な食材とは、ハム、数の子、しめ鯖、かに缶、もずく(酢の物)の5種類。
それに合わせていくワインは、
①ソアーヴェ・クラシコ2009(グエリエリ・リッツアルディ)
樽熟しない、ステンレスタンク仕立て。リンゴ酸が際立つ特性のタイプの爽やか系の白。
②ヴァレー・デ・レンゴ・シャルドネ2008(トレオン・デ・パレデス)
樽熟。酸がまろやかのコクまろ系の白。
③ブルゴーニュ・ルージュ・ピノ・ノワール2008(ラブレ・ロワ)
タンニンがあまり強くないタイプで、赤いベリーのチャーミング系の赤。
④ヴァレー・デ・レンゴ・カベルネ・ソーヴィニヨン(トレオン・デ・バレデス)
赤ワインらしくタンニンが強いフルボディ系の濃厚な赤。
の典型的なワインの4タイプ。だから、それぞれ応用が可能という仕掛けである。
まずは、「ハム」から。通常肉系だから、赤との相性が良いと考えがちであるが、赤はタンニンがハムの味を覆い隠す。最も、ハムが旨く感じたのは、意外に「ソアヴェ・クラシコ」だった。
実際、スペインの名品「ハモン・セラーノ」だって、テンプラニーリョとは合わない。現地の方々は、シードルやマンサリーニャ(シェリー)、ルエダ・ヴェルデホといった白で楽しんでいる。ハムの旨味を引き出すのは、白ワインだった。
次に「数の子」。数の子などの魚卵系は、ワインとは合わない代表格として知られている。特に、白ワインと合わせると「臭み」を強調する。お正月におせちを食べながら、白ワインで数の子を味わった人も多いと思う。まずい白ワインだったのかと思わせるほど合わない。
今日のマリアージュ実験でも、証明された。ソアヴェもシャルドネも魚卵の臭みを感ずる。美味しいとはいえない。しかめ面をする参加者も多かった。しかし、カベルネくらいの強い赤ワインでは、香りをマスキングし、美味しく味わえるのだ。これまた意外なマリーアージュだった。
樋口講師いわく「臭いものは、色の濃いモンと合わせてな」と大阪弁で力説し覚え方を披露。「色素が香りをマスクする」と。これまたわかりやすい。
次は、僕の大好きな「しめ鯖」。これは、今年東京の日本料理店で、オーストリーワインとのマリアージュで実証積み。赤ワインほど相性がいい。白のソアヴェは、「臭み」を増した。シャルドネは、ソアヴェほどではないが、「臭み」が残る。ここでもカベルネが最もベスト・マリアージュだった。魚=白ではないのだ。酢の酸味とカベルネのベリー系がほどよくマッチする。
これは、カツオやマグロも一緒だ。これらも色の濃い赤ワインがよく合う。さらに生魚の血合いのある魚は、鉄分も多く、赤との相性がよい。青魚の血合いの多い、サンマやいわしも同様な考え方が応用できる。
「カニ缶」は、僕は白以外とは合わないと思っていた。カニは、旨味が濃縮している。だから、爽やか白ワインでは、相手にならない。カニのアクが流れてしまうのだ。シャルドネでなんとか楽しめる。ピノ・ノワールも面白い。タンニンが強いカベルネでは、カニの味が弱まる。しかし、熟成によってタンニンがまろやかになるボルドーは、よく合うというから、面白い。
そして最後は、「もずく」(酢の物)。ほとんどの方が、白とベストマッチと予想した。試してみると、まさに目から鱗である。
本命の酸が引き立つソアヴェが、ダメなのだ。つまり、ソアヴェの酸味がなくなるように感ずるのだ。酢に負けてしまうからだ。シャルドネは、樽の香りが邪魔をする。ピノまあまあ。カベルネは、タンニンが酢の物によって甘さに変わる。これもベストマッチなのだ。
僕自身も「思い込み」があったことを、深く反省した講義だった。しかも、おもしろおかしく、大阪弁で語る樋口氏の講義は、食べながら飲むという作業を通し、左脳と右脳で理解できた。
例会参加者も、「意外なマリアージュ」に「先入観を変えなきゃ」と思ったに違いない。とてもいい勉強になった。
その後、役員と賛助会員との懇談会は、メーカー、インポーター、ワイナリーの方々と来年以降の連携のあり方、情報発信のあり方について話し合った。実りの多い前向き発言が多く、福井富士子率いる北東北支部長にとっては、さらに加速していく好材料を見つけ出すことができたと思う。あとは、実践をしていくのみだ。
2日間のワインのセミナーは、勉強になった。ブラッシュアップでき、この学んだことを、還元していきたいと思う。賛助会員懇談会でも、合計30種類のワインをすべてテイスティング。数点、素晴らしいワインを見出す。商談も成立し、12月中旬に弊社に入荷してくる。こういった機会は、積極的に参加して、造り手の気持ちや意図を聞くに限る。
2日連続の新幹線こまち最終便で大曲に到着。昨晩は、危うく乗り越すピンチだった。爆睡していたからだ。大曲がスイッチバックでよかったと初めて思った(汗&笑い)