第14回 花火作品発表会(日本煙火協会青年部) |
初日の日本煙火協会青年部総会、作品発表会、懇親会等では、多くの花火師さんと有意義な交流ができた。また、多くの情報をいただいた。そして、本田正憲日本煙火協会会長、河野晴行専務、斉木(啓)山梨県会長(マルゴー社長)からは、3次会、4次会までお世話になった。
甲府の「甲府富士屋ホテル」で総会終了後、参加者約80名は、大型バス2台に分乗して、山梨県が誇る「花火の街」市川大門に向かう。甲府からバスで約25分で、市川大門に到着する。
僕らが到着すると、もうそこには花火愛好家の方々が約20名くらい市川大門「神明の花火」花火資料館前に陣取っていった。おなじみの奥村さんや沢辺さんの顔がある。バスの中の花火師諸兄も「おおっ、秘密裏の会にまで来ているよ」と感心しきりだった。彼らの花火に対する「愛」や「情熱」には、敬意を表している。
日本煙火協会青年部のセミナーのハイライトは、なんといっても自らの玉を2発持ち寄り、作者名を伏せて、玉名だけを明示して打ち揚げる「作品発表会」だろう。今回で第14回目となる。
僕自身、審査員を頼まれたのは、2回目となる。ちなみに、今回の審査員の顔ぶれは、前出の本田日本煙火協会会長、河野同専務、斉木山梨支部会長と僕の4名である。
今回のエントリーは、35名。標準審査玉(山内弟)を入れて、36名の参加となる。
今回の僕のお気に入り花火(高得点80点以上)は、5点だった。気になった花火に関して解説を加えたい。
11番「三重芯の華」この花火は、唸るものがあった。「5号玉(5寸)で、三重芯が完璧だった」素晴らしい精巧さのある花火で、2発とも見事に目視できるばかりでなく、星に力があり、光露の消え方までパーフェクトで余韻が残った。もちろん、表彰式でも一番最初に会長賞を授与されていた。
30番「松島 花毎」この玉名だけで、作者はわかってしまうのだが、これまた、5号玉で見事な「吊物」の技を披露してくれた。特に2発目の花毎(はなごと)は、消え方もピタっと一斉に消え、「花火界の文化遺産」的花火であることを、改めて強く認識した。もちろん会長賞受賞。
17番「閃光花」情緒あふれる、味わいある「綺麗な」花火だった。そして最後に閃光雷がポイントであり、手の込んだ構造の花火だった。
7番「朝顔につるべとられてもらひ水」これは、遊び心のある玉名とセンスあふれる斬新な花火だった。こういった意欲的な花火は、場をなごませる。上位4名には入らなかったが、こうした遊び心のある計算された花火は評価したい。
14番「芯入り紅青反復変化先銀乱」近年こういった入れ替わり的変化の星を見せてくれる花火作家も増えてきた。たとえば土浦で、野村さんが染め分け入れ替わり芯を出したような現象の花火だった。しかもその変化の後の銀乱の留めもきれいで、印象深い作品だった。こちらも会長賞受賞。
これ以外で、会長賞を受賞したのは34番「フェアリーズ」こちらは、地味ながらも吊物で表現する。手の込みようが評価されたと思われる。これは、単品では評価されづらいが、数多く上げたときの効果は、大きいものと思われる。スターマインで活きてくる花火だった。
36名の作品は、いずれも意欲的な作品が多く、懇親会で会長が「大曲や土浦のように序列をつけるのではなく、挑戦心のある意欲的な取り組みを評価した」という言葉からも理解できよう。僕自身もこうした名前を伏せる審査は、先入観なしにじっくりと花火を見ることができ、いい試みだと思う。今回は、こうしたことに配慮し、実名は挙げないこととする。
市川大門の「神明の花火資料館」では、ホットワインをご馳走になった。やはり山梨は「ワイン」の里である。また、この花火資料館は、地元の花火会社4社で運営されているという。コンパクトでも、こういった資料館は、ほしいものだと思った。
甲府に戻り、懇親会では、いの一番に僕に挨拶が回ってきた。予期してなったが、「花火産業は、しあわせ産業だ」と説いた。つまり、花火は平和な国でしか隆盛しない。戦争や紛争の多い国では、火薬は殺戮の道具となり、火花を見ただけで住民はおののいてしまうのだ。花火は、愛する人々と一緒に空を眺め、しあわせな気分にさせる。そしてそのパフォーマンスは、人々に相当な満足を与え、最高にしあわせな気持ちにさせ、元気を与える効果を持つ。だから、花火は、しあわせ感を創出させる産業「しあわせ産業」だといった趣旨の話をさせていただいた。
懇親会では、様々な世代交代を知ることができた。河野晴行の息子の恵一郎さんが、ホソヤエンタープライズに入社され伊豆の工場で花火修行中とのこと。また、マルゴーの斉木社長の息子さんも、青年部に入会され、バリバリと現場をこなしており、特殊効果花火にも詳しく、引田テンコウマジックの専属特殊効果を担当している。この特殊効果の演出が、創造花火の分野やショートスターマインで生かされてくるといったお話をさせていただいた。頼もしい限りである。
多くの会員の方々とも名刺交換させていただき、数多くのヒントを得たことはいうまでもない。
懇親会から2次会、3次会とワインを出していただいた。甲府富士屋ホテルでは、ハウスワインが、グレイスワインがつくる「マスカット・ベリーA」主体のまろやかなタイプの赤で、ホテルのセンスあるセレクションは、ワイン大国山梨だなと思った。3次会の「田口」でもチリの高級ワイン「アルマヴィヴァ」がサービスされ、ワインファンとしてはうれしい限りだった。山梨では、宴会では「とりあえず、ワイン」というのが日常だそうだ。花火といいワインといい、実にいい場所だと再認識した。ただ、ホテルや宴会場では、県外からのお客様には、山梨が最も力を入れているはずの「甲州」種を使用した白ワインを勧めるべきかと思う。余計なお世話だが、そのように感じた。