龍馬伝は、大友啓二ワールド! |
今年の観光スポットは、四国が注目されている。実際、その効果はもう出ており、大幅な伸びが期待されよう。そんな中、幕末に日本人に夢を与えた立役者でもある「坂本龍馬」を日曜夜8時の大河ドラマでは、一年通じて描いていく。
その主役に、人気シンガーソングライターでもあり、ラジオDJでもあり、時には写真家の顔を持つ福山雅治が龍馬に扮する。いい男の抜擢に、日ごろNHKの大河を見ない女性ファンも必見番組になりうる。
僕は、今回の演出者である大友啓二の「演出」に注目している。彼は、NHKの中でも異色の演出家であり、切り口の斬新さ、カメラアングルのユニークさに定評がある。
今回も、番組の入り方が実によかった。まさに、「こうきたか」と僕をニヤリとさせるオープニングだった。
坂本龍馬の友人の岩崎弥太郎(三菱の創始者)が、三菱汽船の周年パーティでのシーンから始まる。弥太郎が挨拶の途中、刺客に狙われ「国賊」呼ばれされ、「おいは、日本のためにがんばってきた。国賊呼ばれされるとは、許せん」と激怒する。迫力満点の岩崎弥太郎役は、個性派の香川照之。
その弥太郎に、土佐新聞の記者がある質問を投げかける「15年前亡くなった坂本龍馬をご存知ですか?」
弥太郎の顔が一瞬曇る。記者は質問を続ける。「今、土佐では、坂本龍馬のことを知っている人がおりません。彼は、時代を築き上げた立役者です。岩崎さんも同じ、土佐出身とお伺いしておりますが、坂本龍馬のことを知っていたら教えてください」と。
弥太郎は、「坂本龍馬、よう知っとるき。おいは、坂本龍馬は大嫌いじゃ」と言って高笑いする。「人たらしで、オナゴにはモテ、……」と思い出したかのように、ニヤリと笑う。
このシーンの後、タイトルワークが映し出され、テーマミュージックが流されていく。ナレーションは、岩崎弥太郎がこの番組を通してつとめていく。
第1回目の放送では、上士と下士の争いや現実がたくみに描かれている。そして、龍馬と弥太郎の幼少の頃の出会いが回想される。そして、18才の龍馬と弥太郎の生き様や苦悩を描いた。
雨の中のシーンや川での取っ組み合いのシーンは、リアリティが高く描写されている。カメラを固定せず、数台のハンディカメラで撮り映像を作っていくポジティヴ映像処理は見事で、演出家大友啓二の世界がそこにあった。
これは、面白くなると思った瞬間だった。龍馬の人間性は、決して人を憎まない。どうすれば、みんなが納得して動いてくれるのか。人好きの(人たらし)の龍馬を福山が新たな龍馬像を演じていく。弥太郎役の香川もそこまで汚く演ずることができるかと感心した。そして、龍馬の姉さん役の寺島しのぶの個性も光る。実にいい表情をしている。
楽しみな大河ドラマになりそうである。大友啓二の「龍馬伝」演出から目が離せない一年になりそうだ。