顔でキメる。 |
彼は、横浜君嶋屋(酒販店、飲食店など四店)の代表者であり、日本酒とワインの造詣が深く、日本酒の伝道師として海外での啓蒙活動や国内でセミナーや講師活動で多忙を極める。ロンドンで行われるインターナショナル・ワイン・チャレンジの日本酒部門のシニア・ジャッジにも選ばれ、3年目を迎える。
また、フランスワインでも知られざる産地のとびっきり美味なワインを発掘する天才である。そして気に入れば、執拗に取引できるまで何度でもその蔵元に足を運ぶ情熱家でもある。現地のレストランで、シェフのお気に入りワインの情報をチャッチし、蔵元に向かう。その際、取引すべきかどうかを、顔を見て決めるという。
つまり、いい造り手は、いい顔しているらしい。顔に自信があり、上品でオーラすら感じるという。「俺は、これだけやっている。」とキラキラとした目をしているそうだ。ブドウ造りに後ろめたさがないと感じるらしい。「よし、決めた」と話しかけると、ブドウ造りから、醸造まで、さらには理念や哲学も延々と語ってくれ、99%外しはないという。「取引基準は、顔」という君嶋氏の考え方に納得する。
彼とセミナーの前にご飯を一緒した。「秋田の酒は、どうですか?」と尋ねた。「優等生が多く、個性的な造り手が少ない」とのこと。特に「酵母」の選択が、画一的で似た酒が多いと指摘された。さらに、「香りの強い酵母を採用するケースが多く、食事を邪魔する。あくまでも、酒は食事の脇役で、食のうまさを引き立たせるものだが、秋田はまだ酒が主役」と辛口の評価をいただいた。
当日のティスティングに出された酒は、「凱陣16BY山廃純米無濾過」でとても、酸度の高い酒だった。ワイン同様、酸が高い酒は、熟成を可能にする。とてもスモーキーではつらつとした旨味のある古酒だった。君嶋氏は、この酒を「小さい蔵元だが、造り手の一生懸命さが伝わる酒」と評した。そして実にいきいきとした顔をしていると付け加えた。