能代港まつり花火大会、土砂降りの雨の中開催! |
僕が、大曲を出発する時点で、土砂降りだった。本日の天気予報は、北東北はいづれも午後から90%の降水確率で、県北や青森では、夜には大雨との予報が出ていた。出発前に能代花火の幹事会社である北日本花火興業の今野義和クンより、「雨天決行」との確認をしてから、能代に向かった。このような雨の天候のときは、雲が低く大玉花火は、雲に隠れて見えないケースが多い。特に能代港は、7月のこの時期は風が弱く、上空の煙が晴れずに滞留するケースが多く、過去何度も残念な思いをしている。今日は、長袖のパーカーと帽子、傘、そしてLLビーンのゴム製のハンティングシューズで、雨対策をする。
午後4時に能代港まつり花火大会会場に到着する。会場には、ほとんどお客様の姿はない。雨脚が強く、様子伺いをしているのだろう。能代港埠頭を会場にしているため、コンクリートの上に、ビニールシートを敷いて見るスタイルで、水たまりが各所に出来ており、このままでは観戦どころではない状況だ。本部に顔を出し挨拶する。
ABS秋田放送のディレクターと本日の花火番組司会進行役の田村修アナウンサーと酒井茉耶アナウンサーと打合せ。ABSの特別番組は、今年で3年連続となる。僕も3年前から、花火解説者としてお手伝いしている。今回は、能代の気候特性を配慮して、大玉花火競演を番組では紹介せず、5寸(5号玉)までの小玉中心のスターマインの4社競演「幻想花火」を中心に番組が構成されていた。これだったら、いくら雲が低くても見える範囲だ。ABSも試行錯誤を繰り返し、学習されている。僕は、今年も花火を見てのコメントが中心になるため、シナリオはないようなものだ。打合せは、15分で終了する。
午後5時過ぎ、会場を回る。屋台の出店者が、空を見上げ恨めしそうな顔をしている。この気持ちはよくわかる。雨が降るとお客様が来ないばかりか、モノが売れなくなるからだ。特に水物やビール、さらにかき氷は、まったく期待できない。午後5時の時点でお客様が、雨具を着込んで入場し始めている。お客様も「覚悟」を決めての会場入りだ。期待の大きい花火大会に成長した証拠である。バスのシャトル便から、次々とお客様が降り、会場に向かってくる。
この数年の間に、能代商工会議所は、大々的にアピールや宣伝をし、メディア露出も目立つ。そして、主催者の熱い思いが、北東北では珍しい「三尺玉の打ち上げ」まで漕ぎ着けた。キャラクターまで作り、まさに売り出し中の花火大会のひとつにまで成長したと思う。
能代商工会議所の方や能代YEGのメンバーとも情報交換する。2週続けてのイベントであるのにもかかわらず、熱心に雨の中を動いていた。高校生を中心とする「ゴミナビボランティア」の皆さんが、会場のゴミ分別を呼びかけていた。こうした悪天候の中でも、一生懸命に動いているスタッフを見ると、熱くこみ上げてくるものがある。こうしたスタッフのおかげで、大会が成り立っていることを、再認識できた。能代商工会議所の広幡会頭や斉藤能代市長が、マイクを持って「雨の中よく来てくれた」旨を会場ゲートでやっていたシーンには、感動した。市や主催団体のトップが自ら、お客様に対し、感謝申し上げているのだ。こうした姿勢は、共感を呼ぶ。この大会は、確実に伸びていくだろうと思う。
雨脚が強くなってきた。テレビ朝日の「Sma STATION」のスタッフも、今月25日の「花火特集」のインタビューの取材を兼ねて来ている。雨のため能代商工会議所のフロントで午後5時15分から20分ほどの収録をした。僕は、その収録の中でも「花火大会にランキングはない。そして優劣はない。」と主張した上で、「満足度」といった面についてお話をさせていただいた。そして日本の花火の緻密さや精巧度の高さは、世界一であると、日本の花火の素晴しさを語った。
そして再び午後6時過ぎに会場に戻ると、大勢のお客様が、入場している。お弁当をごちそうになり、本番を迎えるまでだ。花火師(今野義和、小松忠信、久米川和行、新山良洋の4氏)と本日の幻想花火のショート取材をさせていただく。
だんだん雨が本降りとなってきた。お客様は、ずぶ濡れになりながらも花火大会の開始を待つ。
広幡会頭の挨拶の後、開始号砲玉の尺玉が打上った。しかし、予想通り、雲の中に隠れ光の光跡が見えず、雲が二色に変化する様しかわからない。今日は、大玉は期待できない。
プログラム6番の「特製尺玉競演芸術玉10号10発」は、いずれも雲の中で、天のみぞ知る結果で残念だった。ABSの番組では、気候特性を読んでおり、この点はラッキーだった。しかし、花火鑑賞士はじめ、花火愛好家の方にとっては、目玉のひとつである大玉競演をtチェックできず残念だったろう。
幻想花火に関する僕のチェック
今年の花火大会のテーマは、「みんなの笑い」。各社タイトルにあわせ、音楽を選曲し、花火とシンクロさせていく。いかに、花火で笑えるかが問われる。毎年、幻想花火コンクールが、投票により行われている。
①「オレたちひょうきん族」和火屋
1980年代前半から中盤に流行ったCX系(フジTV)を復活させた人気番組。たけし、さんまなどのお笑いブームきっかけとなったバラエティ。
「たけちゃんマンのテーマソング」や「ホタテのロックンロール」、エンディングのエポの「ダウンタウン」など、20歳代の東京時代を思い出させるなつかしのメロディラインだった。ホタテのロックンロールでのパステルカラーの高速点滅花火は、お見事であったが、曲とはどう見ても合わず、笑えない展開だった。
②「能代の夜だヨ!全員集合」大曲花火化学工業
これこそ、TBSが8時のゴールデン枠で視聴率トップと君臨した伝説のドリフの人気番組。お笑いの走りともいうべき怪物番組。その番組に出てくる音楽を用いた花火。新山クンならではの「お色気」路線、加藤茶の「ちょっとだけよ」の少しエロティックな花火には、仮設スタジオでは、大笑い。最後は、音楽とは連動せず、フィナーレとなったようだ。
③「クラッシック?メドレイ2009」北日本花火興行
「お笑い」花火の伝道師今野義和の世界だった。嘉門達夫の替え歌クラッシクメドレー。雨のため仮設スタジオからは、歌詞が聞きづらく、作者の意図したものが、伝わりづらい状況だった点が残念ではあったが、音楽と花火のシンクロは、ピカイチでお見事だった。しかし、歌詞と裏腹に花火は真面目そのものだった(笑い)
④「ゲバゲバ90分-花火スペシャル版-」小松煙火工場
これは、40年前の日本テレビ系の人気番組で、前田武彦と大橋巨泉司会のお色気あり、お笑いありの大人のバラエティ番組だった。この番組を理解できるのは、45歳以上。おじさん、おばさんを中心とする高齢者世代ウケを狙った?もの。僕は、もちろんこの番組の大ファンで、あのお色気に性の目覚め?を感じていた(笑い)。司会の酒井アナは、「ゲバゲバ知りません」も無理もない。もちろん子供たちは、あの音楽すらわかるはずがない。
出そうででないズッコケ花火から始まり、わかる人にはわかるお笑い路線。第二部は、小松忠信得意の「おっぱい花火」が炸裂。牡丹の半円で、くっきりと乳輪を色分けし表現したり、型物花火でおっぱいと乳首を表現したり、アダルト仕様の笑える花火だった。中継チームも「おおおっつ!」と大喜び。明るい話題を花火で表現した。アップテンポのよさが持ち味だった。
フィナーレの前に「白神の轟」。尺玉、二尺玉、三尺玉が、一発ずつカウントダウン式に打ちあがる趣向。ただただ、残念だったのは、いずれも雲の中。しかし、二尺玉、三尺玉のあの轟音と振動は、超大迫力。「晴れていたらなあ」との期待感を強くした。この企画は、ぜひともめげずに続けてほしい。
そして、フィナーレフルワイドスターマイン「明日への希望 能代平和賛歌-あの鐘を鳴らすのはあなた-」
素晴しいエンディングだった。ワイド一斉打ち上げで、ドラネコが5箇所一斉でカタチを表したり、「笑い」のエッセンスが塗された、センスのあるフィナーレ花火で、北日本のバリエーション豊富な演出に最後まで残ったお客様は、大喜び。特に一斉のトラのバリエーションやポカ物のバリエーションの豊富さに、連綿とつながるワイドスターマインに、拍手喝采だった。POP調の「あの鐘を鳴らすのはあなた」を思わず歌いたくなるほどのノリのよさでした。
帰りに屋台テント街を通った時、あきらめずに声を出してがんばっていた女性の一生懸命な姿に引かれ、1,000円分の焼き鳥を購入した。「雨で大変だったね。」と声をかける。「いっぱい残ってしちゃったけど、お客さんには、おまけで2本追加します」と屈託なく笑ってプレゼントしていただいた。やはり、「笑顔」は、いやな気分を明るくする。こうした屋台の印象まで、その大会のイメージにつながることも、再認識をした。
雨の中の能代の花火大会は、大玉は一発も見ることなく、幕を閉じたが、「笑い」という今年のテーマが、救ってくれたような気がする。総括すると、「苦笑い」といった感じだろうか。
(後日写真を数点掲載いたします。操作がうまくいかない(苦笑い))